明日が終わる、その時まで【完】
酸素マスクがとれたおばあちゃんは真っ先にこう言った。
「ご、め……ん、ね」
「謝るな。謝るんじゃねえよっ」
最後まで2人を見守るなんて思ったけど、だめだ……全然涙が止まらないや。
「……大吾に……謝ら……ない、と、いけないこと……が、ある」
「謝る? 俺に? なんだよ。病気のこと隠してたことならもう謝らなくていい」
「違う…………一樹と……佳代子さん、の、こと」
おばあちゃんは苦しそうな顔で、途切れ途切れ、必死に言葉を紡ぐ。
「親父とあの人がどうしたんだよ」
「偶、然……じゃ、ない……二人、会ったの」
「……えっ」
ドクンッ――心臓が大きく揺れた。多分、私だけじゃなくて、柴田も。
柴田の話だと、隣町に住んでいたお父さんと佳代子さんは、本当に偶然、久しぶりに会って、それで意気投合したって。
「……私、が……教えた……」
「えっ?」
「佳代子さん、に……一樹の、住んでる家……一樹が、よく行く、お弁当、屋……」
「……じゃあ、ばあちゃんが仕組んだってことかよ」
おばあちゃんは柴田の言葉を肯定するように深く頷いた。
これには私も驚いた。
私たちの推理はあながち間違いではなかったことになる。
お父さんと佳代子さんが再会した偶然が、仕組まれた偶然だったなんて……。