明日が終わる、その時まで【完】
「じゃ、あ……家の中に、いる、のは……辛く、ない?」
「そうだな。それに関しては、辛いと思ったことはないかもな」
「本、当に?」
本当に? 柴田、信じていいんだよね?
「ああ。嘘じゃねえよ」
「……良かっ……良かっ、た」
おばあちゃんの目から大粒の涙が零れ落ちる。
柴田の言葉に安心したのか、段々と呼吸が小さくなって、瞼がゆっくりと下がっていく。
「すみませんっ! 看護師さんっ、来てくださいっ!」
私はドアを開けて廊下に向かって大声を放った。
「ばあちゃん、ばあちゃん聞こえるか?」
「……」
もうおばあちゃんの声は出ない。
でも、かろうじて柴田の声は届いているようだった。
「ばあちゃん……あのさ」
柴田が言葉に詰まる。
恥ずかしさで言えないのか、気持ちが込み上げてきて言えないのかはわからなかったけど、今は迷っている時間なんて一秒もない。
私は柴田の背後に立って、その背中に自分の両手を当てた。
……がんばれ、柴田。がんばれ。がんばれっ。