明日が終わる、その時まで【完】
「柴田は、ちゃんと休んでた?」
「ああ。俺もさっき起きたところだ」
「そっか。良かった」
「ああ」
「ねえ」
「……なんだよ」
「さっきからなんで背中向けてんの。こっち向けばいいじゃん」
「こっちを向きたい気分なんだよ」
「はあ? どんな気分よ。いいからこっち見ろ」
「服を引っ張んな。お前はガキか」
「大人でないことは確かだわ」
柴田は頑なに顔を見せようとしない。
なにこいつ。12時過ぎると魔法が解けるみたいな? シンデレラじゃあるまいし。
警戒心がなくなったと思えば、気難しい態度をとって。
そんなところまで、出会った頃のポンにそっくりだった。
「本当に似てる」
私の何気ないつぶやきに柴田の髪が揺れる。
「似てるって……前に言ってた、お前の大切な人ってやつか」
「うん」
「そいつって男?」
男っていうか、雄だけど。タマは無いけど。
実は犬なんだとは言えないから、「うん」とだけ頷いておいた。
「どういう関係なんだよ」
ポンのことはこれで終わりだと思ったのに、柴田の追求はまだ終わらない。
どういう関係って、飼い主と飼い犬だけど。
家族でもあり、友達でもあり、姉弟でもあり、相棒でもあり……色々だ。
「うーん。まあ、家族みたいな感じかな」
「家族か」
「うん」
「……家族とは結婚できねえよな」
「はあ? 当たり前でしょ。柴田何言ってんの?」
柴田、睡眠足りないんじゃない?