明日が終わる、その時まで【完】
心配になって柴田の服を引っ張ると、今度は急に体を反転してきた。
さっきまで頑なに振り向かなかったくせに。
「ねえ、大丈夫?」
ようやく向き合った柴田の顔は、普段通り。
いや、少し雰囲気が違う。
あれ? 少しじゃない。
柴田って、こんなに穏やかで優しい目してたっけ?
憑き物がとれたような、すっきりした澄んだ瞳。
おばあちゃんの死にきちんと向き合えたことで、自分の中の殻が破けたのかな?
「顔、変わってる」
「あ? 寝ぼけてんのか?」
「寝ぼけてないよ。もう起きた」
「じゃあどう変わってんだよ」
「格好良くなった」
「……」
柴田の顔が、首から赤く染まる。
なんだ、照れてんの?
そっか、照れてんの。
照れてやんの。可愛いやつ。
笑いを必死にこらえているのが柴田にもバレバレだったようで、
「……お前、覚えとけよ」
まだ少し赤い顔で私を睨みつけ、そう吐き捨てた。
覚えておくよ。
柴田が照れて首から顔真っ赤にしていたこと。
こんな可愛い瞬間、きっと忘れないと思うけどね。