明日が終わる、その時まで【完】



「佐野さん、数学どうだった?」


席に座って黒板をぼーっと見ている私に、福沢くんが近づいてきた。


「学年1位の福沢先生を前にしてできたなんて言えるわけないでしょーが」

「言葉にドゲがあるなぁ」


福沢くんが苦笑しながら自然に私の隣の席に座る。

だってそうでしょ。

全教科満点も(なん)なくない福沢くんに「できたよ!」なんて自信をもって言える生徒はそうそういないって。


「……勉強もいいけどさ、ちょっとは身なりも気にしたら? 高校生なんだし」

「へっ?」


私は福沢くんの後ろ髪にできている派手な寝ぐせを触った。


「ワックスで整えたりしなくてもいいから、寝ぐせくらい直してくれば?」

「……あ、はい」


福沢くんは頬を赤く染めて頷く。

私に寝ぐせを指摘されたことがよほど恥ずかしかったのだろう。


恥ずかしいと思うならちゃんと直してくればいいのに。


男子って、見た目に頓着ある子とない子の差が激しすぎない?

ていうか髪サラサラだなー。猫っ毛てっやつ? 

子どもの髪の毛みたい。



触り心地がよくて、机に肘をついたまま、ずーっと福沢くんの髪をわしゃわしゃしていると、





「おい、やめろ」




頭の上から柴田の声が降ってきた。
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