明日が終わる、その時まで【完】
上を向くと、むすっとした表情で私を見下ろす柴田がいた。
「なにその顔。別にいじめてないじゃん」
「いいから手放せ」
こないだまで自分が悪のリーダーみたいな立場だったくせに、今度は正義のヒーロー?
人って本当に変わるなぁ。
いや、変わったんじゃないか……。
福沢くんが言うには、今よりもっと幼い頃、友達から仲間外れにされたり意地悪されてた福沢くんをいつもかばっては、『お前はお前のままでいい』って励ましてたんだっけ。
じゃあ、本来の柴田に戻りつつあるってことか。
私は大人しく、福沢くんの髪からパッと手を離した。
別にいじめていたわけじゃないんだけど……。柴田の行動を否定する必要もないから、私は言う通りにした。
「守、お前も大人しく触られてんじゃねえよ」
それだけでは気がおさまらなかったのか、柴田のイライラの矛先は福沢くんにも向かう。
「ええっ、ご、ごめん」
柴田の勢いに負けて、何も悪くない福沢くんが謝る。
「フンッ……」
「「……」」
それでもまだ不機嫌そうに自分の席に戻る柴田を、私と福沢くんはポカンとした顔で見つめていた。