明日が終わる、その時まで【完】
なにあれ。
カリカリしちゃって。
カルシウム足りないんじゃないの?
わざわざ席立って、自分の言いたいことだけ言って、自分の席に戻るって。
テストが上手くいかなかったから八つ当たり?
「ねえ、なにあれ」
「僕にもわかんない」
私と福沢くんは柴田に聞こえないように声をひそめて喋った。
「案外、テストぼろぼろだったのかもよ」
「それはないと思うけど……」
「えっ、なんで?」
「だって大吾頭いいから」
「えっ、マジ?」
「うん」
「じゃあなんでイライラんぼになってるの?」
「僕にもわかんない」
そうしている間に、さっき自分の席に戻ったはずの柴田が、再び大股歩きで近づいてくる。
そして、
「離れろ。近づくな」
私と福沢くんのおでこにベチッ、ベチッと自分の手を当てて、
「いだっ」
「いてっ」
私たちを引き剝がした。
「守、帰るぞ」
「えっ、でも僕まだ」
「いいから帰るぞ」
「あ、うん。わかった。ちょっと待ってて」
そして、福沢くんを半ば強引に引っ張って、とっとと教室から出て行ってしまった。