明日が終わる、その時まで【完】
「あの教室って写真部の部室がある場所じゃないかな」
小春が思い出したような顔で教室を見上げる。
「写真部?」
「うん。部室には大きな望遠カメラとかもあるから、それじゃないかな」
「えっ、でもさ、いつも反射してたらさすがに気づくよ」
先月から体育は外だったけど、校舎で光を感じたのは今日だけだ。
「あっ、じゃあ、レンズの蓋をつけ忘れたのかもね」
「レンズの蓋?」
「うん。カメラのレンズってね、繊細で傷つきやすいから使わないときは必ず蓋をするの。カメラのレンズってものによってはすごく高価だし、カメラが好きな人ならなおさら。レンズに蓋をしない人はいないんじゃないかな」
「小春、やけに詳しいね」
カメラッ娘だったなんて聞いてないよ?
「実は最近、お父さんが趣味でカメラを始めてね。ご飯を食べてるときとか、カメラのことばっかり話すから、私も詳しくなっちゃって」
「ふーん……私、ちょっと見てくる」
「えっ、ちょっと、晶ちゃん!」
今座っている位置からだと教室の中までは見えない。
私はあの光の原因がカメラであることを確かめるために、教室の中が見える位置まで走った。
何度も校舎を振り返って、走って。
そして、ある場所で足を止める。
「…………本当だ」
小春の言う通り、窓のすぐそばには三脚に置かれた望遠カメラがあった。