明日が終わる、その時まで【完】
柴田になんの説明もないまま、私たちは学校を出た。
その間も、私は走る足を止めない。
柴田も私のスピードについてくる。
でも10分ほど走り続けたところで、さすがに柴田が口を開く。
「おいっ、あとどれくらい走る気だよっ」
息を切らしながら尋ねてくる柴田に、
「あとっ、10分くらいっ」
と、答えた。
もう少しで駅だから、実際には10分もかからないかもしれない。
「こんだけ人のこと走らせておいてっ、しょうもねえ理由だったら承知しねえぞっ」
「わかんないっ」
「ああっ?」
「私の想像が、現実かどうかはわからないっ」
「はあっ? 意味わかんねえよっ」
「でもっ、もしも現実だったとしたらっ、もしもっ、もしも私の考えすぎが、万が一当たっていたら、柴田のお母さんの死の真実がわかるかもしれないっ」
「っ!」
「それを確かめたいのっ」
私の馬鹿みたいな想像が、現実なのだとしたら、可能性が1%でもあるのだとしたら――確かめずにはいられない。
「……行先どこだ」
「柴田が当時住んでたマンションッ」
「佐野、もっと早く走れるか?」
「うんっ、いけるっ」
「スピード上げるぞ」
「うんっ」
授業をさぼらせて無理やり連れてきた理由がお母さんのことだとわかると、柴田の顔が別人のように引き締まった。
何も手がかりがない中で見つけた可能性なら、たとえ1%でも手放したくない気持ちは私よりも強いはずだ。