明日が終わる、その時まで【完】



画面に映るお母さんは、(うつ)ろな目で、ぼーっと空を見上げていた。

何か悩んでいる様子に見える。




すると……突如、お母さんの背が高くなる。


台か何かに上ったのだろう。


そして、あっという間にマンションの欄干に右肘をかけた。






「……やっぱり」





柴田がつぶやき、ぎゅっと目を閉じる。






「大吾、目を開けろ。まだ終わってない」





画面に映るお母さんは、俯いて、欄干に右肘をかけたまま動きを止めた。


しばらく、時間だけが流れる。


やがて、その肘を……引いた。






俯いていた顔がゆっくり上を向く。


目に涙を浮かべてはいるものの、強い眼差して、真っ直ぐ前を見つめていた。


もがき苦しみながらも、〈明日〉を見ている目だった。





そして、エプロンのポケットから何かを取り出すと――優しく、とても優しく、笑った。



それを空に掲げて、本当に嬉しそうに眺めていた。






「なんだろう、あれ」


「わかんねえ」



お母さんが持っているものはとても小さくて、何を持っているかまでは映像ではわからなかった。


すると、突然、手に持っていたものがこぼれて、そして――

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