明日が終わる、その時まで【完】
「前話しましたよね。俺のマブダチで、一昨日までインフルで休んでた佐野晶です」
さん付けに、敬語まで……。
完全に舎弟。いや、信者だ。
「こいつ女ですけど面白いやつなんですよ。根性もあるし怖いもの知らずだし」
まっつんは必死に私のことをアピールしてくれるけど、柴田の表情は変わらない。
それどころか、ピクッと眉根が寄せられた動きを私は見逃さなかった。
「武。俺は女が嫌いだって言ったよな」
圧力を感じる低い声から、私を含めた全女子を否定する言葉が放たれた。
同時に、教室の温度も10度くらい下がった気がした。
「は、はい。でも、晶は他の女とは違うんで、」
「武」
「……はい」
「楠田みたいになるのは嫌だろ」
「……っ」
「わかったらさっさとその女下げろ」
「……すみませんでした」
機嫌が悪くなった柴田を前に、まっつんの顔が分かりやすく青ざめていく。
まっつんは震える指先で私の腕を掴むと、「晶ごめん」と小声でつぶやいて、私を席に戻す。
別に私だって柴田大吾と面と向かって会いたかったわけじゃない。
でも、一つだけ聞き捨てならないことを聞いてしまったからには、素直に席に戻ることはできない。