明日が終わる、その時まで【完】



――……一人の時よりもずっと強くなったようにみえたんじゃ。後ろ姿が、逞しくなったと思ってたんじゃよ……わしには、そう見えていた


――……誕生日も、クリスマスも、全部、母親の手作りケーキだった


――……すげー足遅くて、母親と遊ぶと物足りなかった


――……俺が、友達と喧嘩して、顔にかすり傷作っただけで、泣きそうな顔してた


――……母さんは人の気持ちに敏感な繊細な人だった。父親も……母さんの親族もみんな、母さんは弱い人だったからって言ってたけど


――……だけど……俺は、弱いなんて思ったことはない


――……この子に手を上げるなら私を殴ってからにしてください。でも、私は絶対にあなたを許しませんって、父親に啖呵切ったことがあったんだ






先生が見たお母さんが真実だった。

柴田の思い出の中にいるお母さんが真実だった。



柴田のお母さんは、苦しい現実よりも死への安らぎを求めて、お父さんと柴田を残していくような人じゃなかった。



もがいても、苦しんでも、それでも、生きることを選んでいた。

柴田のお母さんは、弱い人ではなかった。






< 182 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop