明日が終わる、その時まで【完】
映像に映っていた柴田のお母さんは、強い眼差して、真っ直ぐ前を見つめていた。
「あの目は、目の前の苦しみから逃げたいと思う人の目じゃない。苦しみに立ち向かおうとする人の目だった」
「……ああ……俺にも、そう見えた」
「柴田のお母さんは、弱くなんかなかった」
「……ああ……間違いねえよ」
「柴田が信じた通り、お母さんは強い人だったんだよ」
「ああ……そうだ。そうだ」
柴田が頷いて、私の言葉のすべてを肯定する。
「もうどうしようもないほど、現実から逃げたくなって、死への誘惑に負けそうになったことはあったかもしれない」
実際に、映像では直前まで飛び降りようとしていた。
「だけど、負けなかった」
「ああ」
「本当は、柴田を置いていきたくなんかなかったんだよ」
「ああ」
「柴田とお父さんと生きることを選んだんだよ」
「……ッ……ああ」
柴田が泣き止むまで、溢れる心が落ちつくまで、私はずっと柴田の背中をさすっていた。