明日が終わる、その時まで【完】
――……
どれくらいそうしていたのか、腰にまわっていた柴田の手がそっと離れると、私と柴田の目が合った。
柴田の目には、私がちゃんと映っている。
傷ついて、傷ついて、傷ついて。深い悲しみに侵された目が、今は私を見ている。
私の姿を心に映してくれているのが、ちゃんとわかる。
「佐野」
柴田が私に何かを言いかけた時だった、
「大吾っ、晶ちゃんっ! わかったぞ!」
奥の部屋から柴田のお父さんが興奮気味に走ってくる。
私たちが警察署に来て、もう3時間以上は経っていた。
映像の解析に時間がかかっていたようだけど、どうやら何かがわかったようだ。
お母さんはとても小さなものを持っていた。
小さくて、なにを持っているのかまでは映像ではわからなかったけど……。
お父さんは息を切らしながら、私と柴田に一枚の写真を見せた。
「……これは」
そこには拡大鮮明化したお母さんの手元が映っていた。
お母さんがエプロンから取り出していたものは――小さなコルク瓶だった。
華奢な女性の指先と比較して、全長2cmほどのサイズだろうか。
よく見ると、ガラスの中に白っぽい石のようなものが入っている。
なんだろうと不思議に思っている私の隣で、柴田がハッと息をもらす。