明日が終わる、その時まで【完】




「楠田くんは?」



楠田くんの姿がない。

私は同じクラスになったことはないけど、楠田くんのことは知っている。

16歳とは到底思えないプロレスラーのようなあの体格は一度見たら忘れない。


それに私、前に一度スーパーで楠田くんを見たことがあるのだ。

妹らしき小さい女の子を二人連れて、お菓子を一緒に選ぶ楠田くんの姿を。


学校での楠田くんは知らないけど、少なくともその時の楠田くんは優しいお兄ちゃんにしか見えなかった。

学校ではなかなか強気な態度をとっているみたいだけど、それは友達の前だけで、本当の楠田くんは気の優しい子なんじゃないかな。

私の視線から逃れるように、まっつんは目を伏せて黙り込んだ。


「楠田くん、どこ」


まっつんから男子たちに視線を向けるけど、みんな私の視線から逃れるように顔をそむけて、誰も目を合わそうとしない。


そんな状態の中、唯一私に返事をしたのが、



「楠田なら、体育館で伸びてるぞ」



柴田大吾だった。

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