明日が終わる、その時まで【完】
「えっ、約束12時だったよね?」
腕時計を確認すると、12時20分を過ぎたところだった。
「えっ! うそっ」
もう、そんなに時間が経っていたなんて……。
せっかく駅前に行くのなら、柴田のお母さんの亡くなった場所で手を合わせたいなって思って、遠回りをして来たことで、約束の時間を20分もオーバーしていた。
「ごめんっ」
「連絡くらいしろ」
「うん。本当ごめん」
「何か、あったかと思うだろ」
「……うん、ごめん」
何かなんてあるわけないよって、前の私だったら平然と言ってしまうのだろうけど、今はもう言えない。
だって、人が想像もできないことで事故は起きてしまうことを、私は知ったから。
もしかして、ずっと真剣な目でスマホを見ていたのは、私の連絡を待っていたから?
「柴田、ごめん」
心配させて、不安にさせていたのだとしたら、ごめん。
改めて、ちゃんと頭を下げた。
「もういい。みんな待ってるから、行くぞ」
「うん……あっ、荷物」
ごく自然に、私の両手にあった荷物をひょいっと取りあげる。