明日が終わる、その時まで【完】
ポンの要求通り、お腹を優しくなでなでしながら、キッチンに立つパパに顔を向けた。
「っていうかさ、一応パパも保護者なんだから、娘からこういう報告聞いちゃったら学校に連絡する気とかないの?」
さっきから私の話をうんうん聞いてるだけだけど、娘のクラスが学級崩壊しているって聞いたら、普通の保護者なら校長とか教育委員会とかに掛け合うのでは?
パパは穏やかな笑みを携えて、こねる手を止めずに私に返事をする。
「うーん、別にしてもいいけど、でもそれって根本的な解決にならないんじゃない?」
「まあ、確かに」
「僕ら保護者が問題を表沙汰にすればきっと一時的には大人しくなるだろう。でもその後も晶たちの高校生活は続くわけだよね?」
「うん」
「その生活の中に僕ら保護者はいない。毎日見張ることもできない。本当に必要な時は大人が入るけど、基本的には自分たちの生きる社会、晶たちでいえば学校だね。学校で起きている問題はその当事者たちの力で解決しないと、根本的な解決とはいえないんじゃない?」
「……ごもっともです」
優男のくせに、パパは時々まともなことも言う。
それに、普通の学級崩壊だったら今すぐ大人が介入してどうにかしないとってなるだろうけど、うちのクラスの場合、〈いじめっ子がいじめられっ子たちにやり返されている〉っていう、誰も同情してくれない特殊なタイプだ。
だからこそ、先生たちも見て見ぬふりをしているのかもしれない。