明日が終わる、その時まで【完】
「なにそれ! そこは『もちろん』じゃないの?」
大人なら、父親なら嘘でも理想論とか言うでしょ。
パパに普通の大人や普通の父親を求めること自体が間違ってるのはわかるけど。
「父親としてはもちろんって肯定してあげたいところだけど、晶より長生きしている年長者として言っちゃうと、世の中にはどんなに真心をぶつけても通じない人もいるんだよね」
娘に対しても平気で本音を言ってしまう。それがうちのパパだ。
「だけど、父親としてはそれを理由に真心を持たない、心を人にぶつけられない人間にはなってほしくないよね。実際、柴田くんがどういう人間かは、見た目や評判だけじゃ判断できない。正面からぶつかってみないとわからないよ」
「うん」
「これから小春ちゃんと楽しい高校生活を送るためにも、柴田くんのことはクリアにしといた方がよくない?」
私は深く頷いた。
そこだけはパパと完全に同意だ。
卒業までの二年、小春と楽しく高校生活を送るためにも、やっぱり柴田のことは無視できない。
「でも手懐けるってどうすればいいの?」
人間を手懐けた経験なんてないんだけど。
器用にハンバーグを形成するパパに尋ねた。
「まあ、手っ取り早く弱味でも握っちゃえばいいんじゃないかな?」
これがうちのパパだ。
いいことを言ったなと思えば、なかなか物騒なこともさらっと言う。
汚れた大人は無視して、私はポンを抱っこしながら柴田大吾攻略法を考えた。