明日が終わる、その時まで【完】



水鉄砲で墨汁を顔や体にかけるのと、墨汁の原液を無理やり飲ませるのでは、仕返しのレベルが違う。

ちょっとした悪ふざけと拷問ほどの差がある。

場合によっては体を壊す可能性だってある。


もとは真面目なまっつんも男子たちもそこまでするつもりはなかったようで、想像を超えた柴田の言葉に、男子が後ずさりしたのがわかった。


「あの、飲ませるのは、さすがに……」


まなるべく柴田を刺激しないように、やんわりと柴田の提案を否定しようとするまっつん。


「できねえってか?」


だけど、柴田ははっきりした返事を求める。

できるのか、できないのか。


「……いえ、そうは言ってないです、けど……」


柴田に提示された二択に、まっつんが視線をさまよわせて口ごもる。

最低なことをしたとはいえ仮にも女子二人に対して墨汁を無理やり飲ませるなんてことを、明るくて、正義感が強くて、家族思いのまっつんが、元生徒会のまっつんが――でできるはずがない。

たとえ心酔している柴田のお願いとはいえ、まっつんにはできないと私は確信していた。

だってその証拠に、イッちゃってたまっつんの目がどんどん正気に戻っていっている。


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