明日が終わる、その時まで【完】



「できないのか?」


「………………………す、みません」




戸惑いながらも、弱弱しい声ではあったけど、自分にはできないことをはっきりと伝えたまっつん。

その目は、完全に夢から覚めたように見えた。

一方の柴田は、意外にもまっつんの返事に機嫌を悪くするわけでもなく、「そうか」と一言こぼすと、無言で立ち上がって後ろにある墨汁を手に取った。


そして墨汁の注ぎ口のキャップを取って、一切の迷いなど感じさせることなく、亜美と梨花へと近づいていく。



「あ、ちょっとやばいかな」

「えっ?」


首を傾げる小春を置いて、私はすぐさま席から立つと、柴田の元へと走った。

自分たちの元へどんどん近づいてくる柴田に圧倒されて、足がすくんで動けなくなっている亜美と梨花。

そんな二人の前に立ち、まずは亜美の(あご)に手を掛けようとした……。



「その辺で、もういいでしょ」



柴田の手を、掴んだ。


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