明日が終わる、その時まで【完】
「晶ごめんっ……俺、目ぇ覚めた」
まっつんが私に頭を下げて、こう続けた。
「楠田より強い大吾さんが現われたことで、今まで楠田にコケにされてきたうっ憤んを晴らせるって思ってやってたけど……途中からもう、やられた分は返したなって思ってて……だけど、大吾さんに『それでいいのか?』、『それで終わりかよ』って、言われて、止め時がわかんなくなってた……本当はもう、止めたかった」
「うん。だいたいそうじゃないかと思ってた」
まっつん、本来ならいじめを止める側の真人間だしね。
「大吾さんが怖くて、逆らうのも、失望されんのも、怖くて……俺たち」
今日までこんな状態が続いてしまったと言いたいのだろう。
まっつんの心からの後悔は、誰の目から見ても明らかだ。
だけどさ、まっつん、それはちょっと違くない?
「まっつんの気持ちはわかってるよ。わかってるけどさ、自分がやりたくない行動を選択した理由を柴田にするのは違くない?」
プロレスラーみたいに体が大きい楠田くんを簡単に叩きつけられる柴田の強さ、怖さを、馬鹿げた行動をやめられなかった理由にするのはずるいと思うけど。
「自分の弱さでしょ。柴田を利用してたくせに、柴田だけを悪者にするのはおかしいでしょ」
「…………ん。本当に、そうだ。そうだよな」
私の厳しい言葉を素直に受け止めるまっつん。
多分、私たちに同情してほしかっただけで、言われなくても自分の愚かさも弱さもわかっているようだった。