明日が終わる、その時まで【完】
当たり前のこと言っただけなのに、なにを驚いてるんだか……。
「なんで言い切れんだよ」
「えっ、だって普通に考えたらわかるじゃん」
「わかんねえよ。普通ってなんだよ」
「普通は普通だよ」
「わかんねえよっ」
うん。間違いないみたい。
やっぱ、柴田ちょっとバカだ。
こんなに体も大きくて、顔も綺麗で、野生の獣のようなオーラを出しているくせに、「わからない」とうろたえる姿はまるで小さな子どものようだ。
「少なくとも、私はそう思ってない。柴田が必要ないなんて思ってない」
「……なんでだよ。俺のせいで嫌な目にあっただろ。それなのに、なんでそう言えんだよ」
「さあ? なんでだろ。自分でもわかんないや」
しいて言うなら、やっぱり……ポンに似ているからかな。
初めて会った時のポンの目と同じ目をしているから。
威嚇されても、噛みつかれても、それは、これ以上の悲しみから身を守る術なのかなって思ってしまうのだ。
身を守ろうとする相手に対して、怒りや憎しみを抱くのは違う。
身を守ろうとする相手には――あなたに敵意はない。攻撃もしない。あなたを傷つけるものを私はなにも持っていないって、まっさらな自分を見せるしかない。