明日が終わる、その時まで【完】



そう言えば私が(ひる)むと思ったのだろう。

母親殺しだと告げれば、私がびびって、距離を置くと思ったのだろう。



でも残念だったね。私、もうそれ知ってるんだ。



『柴田大吾は、なんでそんなに変わっちゃったの?』

『……それは……』


学校から柴田の家に向かう前、福沢くんと交わした言葉。

口ごもる福沢くんを置いて足を踏み出そうとした私に、彼は言った。




『お母さんが自殺したんだ。僕たちが、大吾が八歳の時……大吾のお母さん、自宅マンションから飛び降りたんだ。それが一番の理由だと思う』




そんなの、そんなこと……心が闇に落ちてしまって当然だ。

何年経っても、大人になっても、そんなこと簡単に乗り越えられるはずがない。

ましてや、8歳の少年が……耐えられる仕打ちじゃない。




「なんで殺したの?」


私は平然と問う。



「……は?」

「だから、なんでお母さんを殺したの? 嫌なことされてたの?」

「…………」



そこで初めて、柴田の言葉が止まった。


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