明日が終わる、その時まで【完】
私の言葉に間髪入れず返事していた柴田の口が、閉ざされた。
柴田が黙り込んでも私は喋り続ける。
「殺すってことはなにか理由があったんでしょ? ひどいことされてたとかさ」
「……」
「それとも何の理由もないのに殺したの?」
「……」
「息子に殺されるんだもん。どうせ……ろくでもない母親だったんでしょ?」
私のその一言で、伏されていた柴田の目がカッと見開かれた。
何も宿していなかった瞳に、今は怒りの感情がはっきりと読み取れる。
「……それ以上言うな」
「なにが?」
「それ以上母さんのこと言うんじゃねえっっ!」
ドスの効いた大声で、私の制服の胸ぐらを乱暴に掴んだ。
怒りに満ちた柴田の目が私を見下ろす。
「はあ? 意味わかんない。殺したくせにかばうとかどういうこと?」
私は怯むことなく柴田の視線を真っ向から受け止める。
「……っ……したんだ」
「えっ、なに?」
「自殺したんだよっ……ノイローゼで」
制服を掴まれていた力がゆっくりと弱まっていく。