明日が終わる、その時まで【完】
一昨日のメッセージのやりとりで、お母さんが通っていたクリニックを覚えているか柴田に尋ねると、⦅名前は覚えてないけど、二駅隣の雑居ビルにあるクリニック⦆だと返ってきた。
さっそくネットで調べてみると、二駅隣の雑居ビルに入ったメンタルクリニックは一つしかなかった。
もう八年以上前だから、すでに違うクリニックに入れ替わっている可能性もあったけど、ダメもとで昨日クリニックに電話をしてみた。
だけど、事情を説明してもクリニックの人は「個人情報は教えられません」の一点張りで、全く取り合ってくれなかった。
考えてみれば、当然だ。
でも、それで引き下がる私じゃない。
だったら、
「許してよ。まだ予約時間の五分前だからさ」
患者として予約をした。
ここに通う患者さんには悪いと思ったけど、こっちにもやむを得ない事情があるのだ。
「本当に行くのか」
迷っているのか、柴田の足は地面から動かない。
「ここまで来てなに言ってんの? ほら、行くよ」
「……お前、どんな心臓してんだよ」
「はいはい、褒めてなにも出ないから。早く行くよ」
「褒めてねえし、引っ張んな」
私は柴田を引っ張って、エレベーターに乗った。