社長じゃない僕は、君のために何ができる? 〜社長、嫌いになってもいいですか?シリーズ 最終章〜
「最近、雨音は会社を休職したそうじゃないですか」

そう切り出す雨音の父親に

「あなた……それはここで話すことでは……」

今まで俯いているだけだった雨音の母親が、雨音の父親の話を止めようとした。
だけど

「母さんは黙ってなさい」

と、一言雨音の父親が発して、雨音の母親はまた黙ってしまった。
その声は、とても低くて重かった。

「それに……」

ちらと、僕の横にいる雨音に、彼の父親は視線を向けてから

「この間帰ってきた時よりも、雨音はとても痩せた。体調も悪いそうじゃないか」
「それ……は……」
「お父さん違う、それは彼には関係ない」

雨音が焦って僕を庇おうとしてくれた。

「雨音。私は、村山さんと話をしているんだ」

誰からも有無を言わさない。
その決意が、声に現れていた。
雨音は小さく僕に聞こえる声で

「ごめんなさい」

と言った。
彼女の顔色は、やはりとても悪く思えた。
そしてそれに気づいたのは、僕だけではなかった。

「村山さん。娘がこんな状態になったのは……あなたのせいではないんですか?」

雨音の父親は、僕を責める。
視線と言葉、そして態度で。
そして僕は、彼の言葉に何1つ反論することができないでいる。
何故なら、確かに雨音がこのような状態になったのは、僕の恋人という立場になってからだから。

「それで、私らはなぜあなたを信用することができるんです?」

雨音の父親は、そう僕に問いかける。
まるで、僕を試しているかのようだった。
次の言葉を、僕は間違えてはいけない。
そんなプレッシャーからか、僕の喉は、カラカラに乾いていた。
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