社長じゃない僕は、君のために何ができる? 〜社長、嫌いになってもいいですか?シリーズ 最終章〜
互いの両親への挨拶の日時もすでに決めた。
籍は、なるべく早めでもいいと思っていると雨音に伝えた。
式も雨音がしたければすればいいと、僕は言った。
でも雨音は、それに対していつもこう言ってきた。

「社長に合わせます」

と。
それに、雨音はいつも……遠くの方ばかり見ている。
彼女が何をしたいのかが、僕には分からない。
本当に彼氏であるならば、きっと僕は彼女の行動だけで、彼女の気持ちを察することができなくてはいけないのだろう。
だけど、僕には分からない。
どうしても。

何故雨音が、僕に合わせようとしてくれるのか。
雨音が一体、何を見ているのか。
まるで検討がつかないのだ。

彼女が僕の下で働いてくれていた年数分、僕は彼女を知っていると自信があった。
でもそれは、ただの勘違いだった。
僕はきっと……雨音のことを、本当は何も知らないのだろう。
何故なら、彼女が僕に彼女のことを話すことは……ほとんどなかったから。
そして僕は、今頃になって……そんな簡単なことにようやく気づいた。
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