社長じゃない僕は、君のために何ができる? 〜社長、嫌いになってもいいですか?シリーズ 最終章〜
雨音も、僕の背に手を回してくれた。

「ねえ社長……私が社長にされて、1番悲しかったこと……分かりますか?」
「それ……は……」

僕は、あの雨の日のことがすぐに頭をよぎった。

「嫌いになってもいいですか」

と、雨音が僕に初めて感情をぶつけてきた日。
雨音が、僕が浮気をしていたと誤解をした日。
もし自分が逆の立場だったら、きっと同じようにあの日をあげると思ったから。
僕がそれを、どう伝えようか都度確認し、言葉を選びなから雨音に伝えると、雨音は

「やっぱり社長、私のこと何も分かってないんですね」

と悲しそうにぼそりと呟いた。
どんな表情をしているのかは、全く見えない。

「……どういうこと?」

僕は、雨音のつむじに息を吹きかけるように問いかけた。
くすっと雨音が軽く笑った声がした。

「社長は、どうして私が社長を好きになったか……知らないんですね」

そう言った時だった。
雨音が、僕の胸元でもぞもぞ顔を動かしたかと思うと、顔を上げた。
僕と雨音の目線が合うと、雨音は、寂しそうに微笑んだ。
僕は、その雨音の微笑みに、胸がちくりと傷んだ。
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