エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
「あ……」
「あの……」
思わず、声が被ってしまった。
「もしかして、優ちゃん?」
半信半疑な声だった。発せられた声は小さくくぐもっていて聞きとりにくいが、確かに『優ちゃん』と言っている。
「お久しぶりです。優杏です」
玄関のドアを大きく開けてポーチに立つと、優杏は彼に笑顔で挨拶した。
「驚いた。すっかり大人っぽくなっちゃって……」
「いやだ、片岡さん。私ももう26ですよ」
「26……そりゃそうか。俺たちより10くらい年下だったよな」
昔のような気安い口調になってきた。
さっきまでの大手不動産会社『片岡地所』の御曹司らしい話し方ではない。
「今日は……」
言いにくそうに彼が口を開いたのでそれを遮ってこちらから声をかけた。
「どうぞ、お入りください」