エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
苦い思い出
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「お帰りなさい」
エプロン姿で出迎えた優杏を見て、煌斗は玄関に立ち尽くした。
「ただいま……」
優杏が家にいると思うと、今日の仕事ははかどった。
結婚した仕事仲間たちが一分でも早く家に帰りたいと言っても、その心境がわからなかったのだが、やっと煌斗にも理解できた。
(愛らしい妻が家で待っているというのはエネルギーが湧いてくるものなんだ)
「お食事になさいます?」
「いや、その前に話がある」
「話?」
「家のことなんだ。今日、見に行ってきた」
「どうでした?」
「そこまで被害は大きくないが、やはり法面の工事が杜撰だったんだろう」
「やはりと言うのは?」
「排水のための工事にミスがあって、機能していないんだ」
「それで崩れたんですね」
「ああ、悠慎が心配していたのはそれだったんだろう」
「兄は何か感じていたんでしょうか?」
「それはわからないが、技術者のカンだろう」
「そうですか……」