エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
翌日は良く晴れていた。
まだ梅雨は明けていないから、その晴れ間といったところだろう。
優杏を助手席に乗せて、煌斗の車は秋本家に向かった。
首都高速を降りてしばらく走るとモスグリーンの屋根が見え始めた。
優杏の緊張が運転している煌斗にも伝わってくる。
「大丈夫、そこまで酷い状態じゃあない」
「はい……」
優杏の口数か少ないのは、あの大雨の夜を思い出しているからだろう。
彼女にとっても恐ろしい体験だったに違いない。
煌斗は、わざと明るい話題を持ち出した。
「ムサシも連れてくればよかったかな?」
「でも、興奮してきっと走り回っちゃうわ」
やっと優杏が微笑んだ。
「楽園……」
「え?」
「俺たち高校時代に優杏の家をそう呼んでいたんだ」
「楽園だなんて、オーバーですね」
イングリッシュガーデンを"楽園”と例えていたことに、優杏は驚いたようだ。
「そうでもないさ。あの頃の俺たちにとっては、まさに楽園だった」
あの庭にいれば、勉強や学校や家庭のわずらわしさが忘れられた。
何ものにも縛られない時間が、あの頃の自分たちにとっては最高だったのだ。