エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
小箱から大切にひとつの指輪を取ると、ぎゅっと煌斗は握りしめた。
(母さん……)
「母さんは、どこにいるんでしょう?」
ポツリと煌斗が口にした。
「京都だ。大きな旅館の女将をしていると聞いている」
「父さんは、離婚してから母さんたちに会っていないんですか?」
煌斗の言葉は宗一郎には辛いものだった。
「会いたいが……会えるわけがない」
「弟もいるって聞いてます。兄さんや俺の弟が」
「ああ、大林颯太というんだ。お前より5歳年下だ」
「颯太……」
「いつか会う日もあるだろう。気にかけてやってくれ」
自分は父親としては会えないから、煌斗に兄として頼むという意味だろう。
「わかりました」
煌斗はしっかりと頷いた。