エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
波乱
紗子に話を聞いてもらっているうちに、優杏は気分が落ち着いてきた。
「考えすぎちゃダメだよ」
「はい。ありがとうございます」
時計を見ると、10時を回っていた。
「そろそろ……帰りますね」
紗子はまだアルコールが足りないようで、もう少し飲んでから帰ると言う。
「彼が待ってるんでしょ。気をつけて」
マスターにタクシーを呼んでもらい、優杏はバーを出た。
冷房の効いた店から出ると、生暖かい空気に肌がじっとりと汗ばんだ。
(紗子先輩に会ってよかった)
優杏はこれまでと違って、前向きになれた気がした。
(これで、もやもやしていた気分にピリオドがうてる)
退社するまでの嫌な思い出を、胸の奥からやっと消去できそうだ。