エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい


『君とは便宜上の結婚だったはずだ。お互いに了解済みだったろう』

『あの時と今は違うのよ』

『違わない。今も、仕事の関係だけだ』

ジェニファーには理解出来ないかもしれないが、
煌斗は一度だって彼女に好意を寄せたことも欲情したこともないのだ。

『悪いが失礼する』

グラスをテーブルに置くと、煌斗は部屋を出て行った。

優杏が心配だった。
ジェニファーが嫌な話を吹き込んでなければいいのだが。

(優杏は、人を疑ってかかることがないからな……)

ジェニファーに言われたことをそのまま信じているかもしれない。

そろそろ日が傾き始めている。
成城までタクシーを走らせながらも、煌斗には後悔しなかった。

『優杏さんにも話しておいたほうがいいんじゃないか?』

兄のアドバイスをうっかり聞き流してしまった自分の迂闊さが身に染みる。


(優杏……)


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