エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい


訃報が届いた時、俺はニューヨーク支店で大きなビルの買収交渉をし始めたところだった。
親父の力を借りず、自分が手掛ける初仕事だ。後継者として、これだけは失敗できない。ほんの数日でも支店から離れるわけにはいかなかった。

仲間たちに悠慎の葬儀に帰れないと連絡するのは辛かった。

それからがむしゃらに働いて契約を結び、やっと帰国出来たのは悠慎が死んで半年経ってからだった。


俺は日本に帰ってくるなり、すぐに秋本家に足を運んだ。
記憶にある通り、南向きの小高い丘にある家が見えた。モスグリーンの屋根が懐かしい。

人の気配を感じたのか、悠慎が可愛がっていた犬が吠えだした。
しばらくぶりだから、俺を忘れたんだろう。ピッと口笛を吹いてやるとやっと落ち着いた。
キュンキュンと鼻を鳴らして駆け寄ってくる。

「ムサシ」


こいつとも長い付き合いだ。



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