エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
「ああ、おばさんが好きだった松江のお茶だ」
「ええ。父が抹茶の風味が好きだから、我が家はいつもこのお茶なのよ」
「おばさんと同じ、まろやかな味だ……」
「お母さんほど上手じゃないけど」
優杏の苦笑いも、煌斗から見たらどこか懐かしい笑顔だった。
「この庭も、おばさんが丹精込めていたのに」
照れくさい思いを誤魔化すように、煌斗は視線を庭に戻した。
「今は、兄の思い出がありすぎて辛いみたい。いつか落ち着いたら帰って来てほしいんですど……」
「そうか。あまりに急だったから」
「ええ……」
優杏の表情もどこか暗い。
元気に振舞っているが、心の中は悲しみで一杯なんだろう。
「裏庭に行ってみたいんだけど、いいかな?」
「もちろん。ゴールはあのまま置いてます」
煌斗は暗くなった気分を変えようと、庭へ行く事を提案してみた。