エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
次々に浮かぶ思い出を話しながら、気づくと優杏の頬に涙が流れているのが見えた。
「優ちゃん」
「あ、ごめんなさい。どうしてだか最近涙が自然に流れてくるの」
煌斗は思わず優杏の頬に手を伸ばしていた。
「あたり前だ、お兄さんを亡くしたんだから」
涙を拭った後、そのまま優杏の身体をぐっと抱き寄せた。
「泣けばいい、思いっきり」
「片岡さん……」
煌斗が優杏の背を撫でた。思ったよりずっと華奢で頼りない背中だった。
悠慎の代わりに妹を慰めるつもりだったのだが、腕の中の彼女の柔らかさが
違う思いを煌斗に抱かせた。
腕に力を込めたくなったとき、優杏が身体を離した。
「ごめんなさい……」
泣きながらも優杏は煌斗に謝ってきた。
「あなたも辛いのに」
逆に自分を労わる言葉をかけられて、煌斗は思わず優杏の顔を見下ろした。
涙はとめどなく流れていたが、しっかりと煌斗を見つめている。
その表情がたまらなく愛おしくて、煌斗はゆっくり優杏に顔を近づけていった。