エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい


その言葉を思い出すと、煌斗の顔が浮かんだ。
だから、10年ぶりに会った煌斗とキスしたのは優杏にとって特別なことだった。

逆に、彼が既婚者だと思い出してからは冷静になれた。

勤めていたころ社内で心無い不倫の噂が流れ、苦しめられた苦い経験が蘇った。
不倫がいいとか悪いとか、優杏は考えたこともなかった。

恋愛は自由だと思うけれど、身に覚えのないことを決めつけられたのは辛かった。
だから煌斗に妻がいるのなら、今度は誤解されたくない。

(なにもなかったことにしてしまおう)

それが一番彼のためにもなるはずだ。

そう思って、『片岡さん、お互いに忘れましょう』と声をかけた。

煌斗は複雑そうな顔をしていたが、優杏の考えを受け入れてくれたようだ。


< 56 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop