エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい
「何から手をつけようかな……」
さっき引っ越しの荷物は届いたばかりだし、掃除もこれからだ。
すぐに住める状態だが、優杏にはやることが山ほどある。
4月も下旬となれば、春の花は一段落して新緑の季節が近い。
今日はお天気がいいから、動けば汗ばむかもしれない。
ゆったり目のコットンパンツに長袖のTシャツを着ていて、すぐにでも作業開始出来る状態だ。
伸びっぱなしだった髪は首のあたりで無造作に一つに結び、シャツの袖をたくし上げた。
「あれこれ考えるより、身体を動かそう。まずはキッチンの荷物からだわ」
段ボール箱を開けようとしたその時、番犬のムサシがいきなり大きく吠え出した。
ムサシは兄の愛犬で、柴犬の血が少し混ざった雑種だ。
そろそろおじいさん犬だが番犬としては優秀なはず。
その犬がけたたましく吠えるので、心配になってきた。
「誰だろう……」