エリート御曹司は独占本能のままにウブな彼女を娶りたい


優杏は青木デザイン事務所まで来ていたのだが、微妙な降り具合に困っていた。

「雨がひどくなると、駅前のタクシー乗り場が大行列になるんです」
「優ちゃん、免許持ってたでしょ。車で来たら?」

紗子が運転を進めてくれる。

「近くは大丈夫ですけど、ほぼペーパーだから都心まで乗ってくるのはコワくて」
「そうかもね。私なんて免許すら持っていないわ」

紗子はハハハと大きな口を開けて笑っている。

「じゃあ、このコンセプトでよろしく」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」

優杏が立ちあがると、紗子が声をかけてくれた。
「気をつけて帰ってね」

「はい」


ビルを出てから有楽町の駅まで歩くうちに、雨の降り方が激しくなってきた。

(困ったわ……)

最寄りの駅からはタクシーにしようと、優杏は急いだ。

この日の雨が彼女の運命を大きく狂わせることになるとは思ってもいなかった。





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