恋人の木
幹事のサプライズに、みんなはざわめき立っていた。

秀樹が、袋を隣の部屋に置きに行く。

ガイドの中山も席を立った。

『トイレですか?』

またきかなくてもいいことをきいてしまった。

『いえ、隣で女性達のお手伝いをしてきます。』

そういって、戻ってきた秀樹が開けた襖の隙間をすり抜けて行った。


『どうだ、武志。いい考えだろ?』

『全く、お前ってやつは。だから幹事なんて名乗りを上げたんだな。おかしいと思ったよ。』

『まぁ、そう言うな。オレなんか、式の日に残ったボタンは一個だけだったからな。誰が持って行ったかはよく覚えてないが・・・まぁいいや。武なんか、一番人気だったから、今日は大変だな。幸運を祈るぜ。』


一番いて欲しい人は、ここにはいない。


『しかし、中学だぜ、そんなもの未だに持っているものかな?』

『相変わらず、女心が分かってねぇな。』

(お前に言われたくはない。)

『女ってもんはな、ああいうものを、大切に取っておくもんなんだよ。それが証拠に、こうして集まっているんじゃねぇか。』

それは事実であった。

実のところ、彼女達も三十路が見えている。

中には、これを目的に来た女性も少なくはなかった。

こうして、会場を後にした一同は、一路、中学校へと向かったのである。
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