恋人の木

藤原は、想いの全てを打ち明けたかの様な顔をしていた。

暫く続いた沈黙を破ったのも、秀樹であった。

『面白いじゃん！やろうぜ。なぁみんな。オレは絶対に来るぜ。』

それを合図に、全員がざわめきだした。

ただの言い伝えだと笑い飛ばす者、怖いから嫌だという者。

そんな中、武志は、悲し気な顔で表を眺める藤原を不思議に思った。


藤原の視線の先には、今年も咲いていない、「恋人の木」が静かに立っていたのである。


『よぅ武！「ケツ」をとれよ。多数決で決めようぜ。』

このノリノリの秀樹の提案で、この企画は決定したのであった。

その時、教室の隅で、坂本楓も、悲しい瞳で、恋人の木を見つめていた･･･。