離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
姉の美優は杓子定規で真面目すぎるほど真面目な女だった。そんな姉が高校時代に礼さんと会って変わった。
俺は姉が家より恋を選ぶほど情熱的な人だとは思わなかったし、そんな姉を深く愛し、百八十度変えた義兄を尊敬した。恋を前にしては、どんなしがらみも意味を無くすのだとわかった。
駆け落ちを考えるほど思い詰め、愛を貫いた姉を応援したい。姉が結果として放り出すことになった志筑家と古賀家の婚姻を、俺が代わりに叶えることも吝かではない。

しかし、一方で俺は姉の恋を別な意味で感謝もしていた。
これで柊子と結婚する理由が完璧なものになった。そう思ったのだ。

そう、正直に言えば家のことも姉のこともまったく関係ない。

俺は子どもの頃から柊子が好きなのだ。柊子だけが好きなのだ。

だから、絶対結婚しなければならないのは、願ったり叶ったりの状況だった。

「離婚とか、ふざけるなよ」

せっかく結婚できた柊子と別れる気などあるはずがない。
柊子が俺を好きでないことも知っているし、脈がないのはわかっている。しかし、俺は柊子を離さない。情けなくとも理由をつけてこの結婚生活にしがみついてやる。
< 23 / 166 >

この作品をシェア

pagetop