離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる





幼い頃から柊子は可愛い女の子だった。
黒い髪に濃いブラウンの瞳、睫毛が長くて笑うととびきり愛らしい。幼い頃は兄の邦親さんの影にそっと隠れているようなはにかみ屋の引っ込み思案な少女だった。こっちを見てほしくて随分と意地悪もした。

小学校にあがる頃にはすでに好意をもって意識していた。
同級生にからかわれたくないので、基本は無視。ひやかされそうになれば意地悪なことを言ったり、からかうような言動で柊子を遠ざけた。
我ながら嫌な子どもだった。当然、柊子も俺のことが嫌いだったようで自分からは近づいてこなかった。

それでも家族ぐるみで仲がよいので、食事会や大人のパーティーでは顔を合わせる。双方の家でお泊り会などもやった。
子どもたちだけで遊んでいなさいなどと言われれば、俺はなるべく柊子の傍にいた。学校と違い、ひやかす連中はいない。柊子の可愛い表情を眺め、声を聞いていられる。
柊子はたいてい俺の姉と本を読んでいたり、話をしていたり。俺はそこに混じり、おとなしくしていた。

『瑛理は美優ちゃんと誠くんがいると静かだね』

柊子はそう言った。俺が兄姉の前でいい子ぶっていると思っていたようだが、俺は柊子の隣に落ち着いていられる大義名分があるだけだった。
俺がおとなしくしていると、柊子も安心するようで、並んで本を読んでいるときはいつも平和だった。
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