離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
高二の経験依頼、柊子には触れていない。清い仲だ。言い寄ってくる女子はもちろんいたし、男として未経験なのも恥ずかしいので、割り切った女性との付き合いも大学時代に何度か経験した。柊子は俺のことなど気にも留めていないだろうが、柊子には知られないようにした。

俺たちは友人同士。一方で俺の気持ちはどんどん膨らんでいく。柊子も俺を嫌ってはいないはずだ。
結婚の話が出た時も、柊子は同意してくれた。
俺は友人としての距離を保ちながら、結婚式の準備をした。結婚が決まった途端にすり寄って柊子に迫ったら、高二のときの二の舞だ。今度こそ柊子に嫌われてしまう。
だから、そっけないくらいいつのも俺のままでいたし、柊子も変わらない態度でいた。きっとウエディングプランナーなどは結婚式の準備なのに、情熱の見えないカップルだと思ったことだろう。

無事に結婚式も済ませた。会社関係者ばかりの堅苦しい席だったけれど、柊子のウエディングドレス姿を見られたのは嬉しかったし、俺なりに「綺麗だ」と声をかけることもできた。柊子は驚いた顔で「何か変なもの食べた?」と聞き返してきたけれど。

ともかく籍も入れたし、式が終われば、俺たちは晴れて夫婦。
初夜は式場のホテルインペリアルオアシス東京のインペリアルスイートだ。そこで柊子とじっくり一晩肌を合わせ語り明かせば、きっと俺たちはいい夫婦になれる。
恥ずかしすぎるので、長年の片想いを打ち明ける気はないが、どちらも大人なのだ。変な意地さえ張らなければ、分かり合えるに違いない。


まさかその初夜計画を実行する前に、離婚計画を聞かされるとは思わなかったのだ。


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