離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
同窓会当日、俺は柊子の家まで迎えに行き、ふたりで連れ立って会場へ向かった。
銀座の日比谷会館は創業百年のハイクラスサロンだ。創業当時はごく一部の上流階級の人間しか使えない場所だったが、現在は誰でも利用できレストランが有名である。結婚式にも利用されることが多い。
俺と柊子の式は、志筑家が世話になっている東京駅近くのホテルインペリアルオアシス東京だったが、この日比谷会館も候補にあがっていたなとエントランスに入りながら思いだす。

受付開始まで少し早いのでロビーを進み、ラウンジに入った。お茶でも飲んで待とう。

「瑛理がすっかり落ち着いたって、同級生はみんな思うだろうね」

柊子はそんなことを意味ありげな笑顔で言う。

「どういう意味だ。俺は当時から落ち着いてるけど」
「よく言うわよ。学年で一番目立つ男子だったじゃない。いつも賑やかな仲間に囲まれて偉そうで」
「うちの学校、俺やおまえ程度の社長令嬢や令息がたくさんいたし、別に目立ってないだろう」
「政治家の息子とか、芸能人の娘とか、大銀行の頭取の息子とかいたねぇ。でも、瑛理はクラスの中心だったし、学年で一番目立ってた。声が大きくて、男子たちから人望があって、ガキ大将って感じ」

俺からしたら柊子の方が人気者に見え、それが俺を焦らす原因でもあった。俺は精々、同じ類いのやんちゃな男子が群がっていただけ。
そうか、考えてみれば集める人の層は違ったかもしれない。柊子はスポーツが得意で快活だったので、部活で活躍するタイプの人間が集まっていた。
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