離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
間もなく開会の挨拶があり、同窓会はスタートした。
人数も多く、立食パーティーの形式なのでひとりひとりが挨拶をするようなことはない。好きに飲んで食べて話すスタイルだ。誰しも懐かしい友人と近況報告をし合い、当時の思い出話に花を咲かせる。

俺も柊子も知り合いが多いので、最初のうちはお互いがどこにいるのかもはっきり確認できないような状態だった。
そのうち、なんとなくクラス同士のグループでまとまるようになってくる。五クラスの中で、うちのクラスは特に仲がよく、俺も柊子も大きな輪の中に混じった。

柊子は女友達三人と笑い合っているが、その近くに何人か男がいるのだ。確か当時付き合っていた男女がいるから、そのせいだと思うのだが。気になるのは河東寿(かわとうひさし)という男だ。
河東は高校時代軽音部で女子に人気のあった男だ。柊子と仲が良かったはずだが、今日はやたらと傍にいる。
もしかして狙っているのだろうか。ボーイッシュな魅力のあった柊子が、エレガントな女性に変貌を遂げていて気になっているのは確実だろう。柊子も隙のある方だから、近くで見ていれば俺も少々やきもきしてしまう。

「え、柊子結婚したの?」

ひとりの女子の声に、俺は顔を向けた。声をあげたのは柊子と親しい女友達で、柊子はその中心で頬を赤らめてこくんと頷いている。柊子から言いだすとは思わなかった。
こちらを見るので、俺はかすかに頷き柊子に歩み寄った。

「そう、俺たち結婚したんだ」

河東にも、周囲の連中にもしっかり聞き取れる声で宣言する。その場にいた元クラスメート二十人ほどがええ!と叫び、きゃあきゃあと女子の歓声があがる。
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