OL 万千湖さんのささやかなる野望
「かっ、課長っ」

「なにがいけない。
 もう結婚するんだろ?」

「カーテン開いてますっ」

「狸しか見てない」
と言う駿佑に両の手首を抑えつけられる。

「狸でも嫌ですっ」

 駿佑がもう一度、口づけてきた。

 さっきよりも強く激しく。

「ジョ、ジョウビタキも見てますっ」

「夜は激突してこないっ」

 ……そうですね。

「あ、あの、でもっ」
と万千湖がなおも抵抗しようとしたとき、駿佑が間近に見つめ、訊いてきた。

「俺が嫌いか?」

「そ、そんなわけないじゃないですかっ。
 私、課長に逃げられたくなくて。

 課長にトゲトゲの首輪をはめたいな、とか。
 トゲトゲの指輪をはめたいな、とか、思ってるのにっ」

「……トゲトゲから離れろ。
 っていうか、何故、トゲトゲだ」
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