OL 万千湖さんのささやかなる野望
「課長も婚約指輪をはめてください」

 万千湖はそう駿佑に向かい、言った。

「課長に何処かに行かれたら嫌です。
 課長が誰かに連れて行かれたら嫌です」

「……それは、何処から現れた誰なんだ?」

 駿佑の頭の中では突然、庭にUFOが現れ、降り立った宇宙人が自分を連れ去ろうとしていたのだが、もちろん、万千湖はそんなことは知らなかった。

「俺は何処にも行かない。
 言っただろう?

 俺は不器用だから、一生、お前ひとりしか愛せない。

 俺の愛が重すぎるなら、今のうちに言え」

「……言ったらどうなるんですか?」

 こわごわ万千湖は訊いてみた。

「お前にトゲトゲの首輪をはめよう」

 嫌がっても俺から逃げられないように――。

 そう笑って、キスしてくる。
< 579 / 618 >

この作品をシェア

pagetop