OL 万千湖さんのささやかなる野望
「あっ、綺麗。
もう写真撮っていい?」
結婚式当日。
式場の控室から教会への移動途中、万千湖はお手洗いにでも行ってきたらしい雁夜と出会った。
雁夜の手には立派なカメラがある。
「あ、ありがとうございます」
万千湖はガラス窓の向こうの庭園を背景に雁夜に写真を撮ってもらったが。
雁夜の背後には、いつの間にか、美しすぎる新郎姿の駿佑が腕組みして立っていた。
「まだ控室にこもってろ」
と万千湖に言う。
「えっ、でも、もう……」
「こもってろ、ずっと」
式はじまらないじゃないですかっ、と思う万千湖の背を押し、駿佑は控室に戻そうとする。
雁夜が背後から、
「お色直しで、『太陽と海』の衣装とか着ないの~?」
と言い、受付周辺にいたみんなも笑っていた。
その前で、入れ、入れと控室に戻そうとする駿佑を振り返り、万千湖は訊いた。
「え? 入るなですか」
駿佑は渋い顔をし、
「押すな押すなじゃない。
ほんとに入ってろ」
と言う。
「……無駄に、綺麗なお前を人に見せるな。
……ま」
ま?